憲法学習の課題

私は中学校社会科・高等学校地歴公民の教員免許を所持しており、実際に中学校で教鞭をとっておりました。中学3年生になると生徒は公民的分野を学習しその中で憲法を学びます。ですから、義務教育を終えた人はすべて憲法がどのようなものかを知っていることになります。

しかし、憲法は法律と大きな違いがあるということを多くの大人は知りません。憲法は法律と同じで、すべての国民が憲法を遵守する必要があると考えています。国民が遵守する必要があるのは法律で、憲法は国家権力が国民の権利を侵害するのを防ぐための規定です。ですから、憲法を遵守するのは国民ではなく、国家権力を有する者たちです。

第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

このように、日本国憲法99条では憲法を遵守する立場の者を「天皇」「摂政」「国務大臣」「国会議員」「裁判官」「公務員」の6つの立場の者に限定しています。ここに国民は入っていません。むしろ、国民はこの6つの立場の者たちに憲法を守らせるために目を光らす立場にあるわけです。

義務教育で学ぶ憲法は、三本柱である「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」が中心です。ですから99条の条文については別の表現でさらっと教科書の本文中で触れているだけで深くは学びません。

ただ、日本国憲法の三本柱を学ぶ以前に、憲法と法律の違いを理解し憲法と国民の関係を熟知した上で憲法の内容を学ばないと、憲法の学習としては不十分ですので、私が授業を行う際はこの99条から学びます。
しかしながら、国民の権利自体を理解するのは中学3年生の人生経験では不十分です。そもそも権利意識が育まれていないことがその理由です。

過去にどのような立場の者が権利を侵害されてきたかという判例を多く知ることで、おぼろげながらイメージしてくれるとは思うのですが、如何せん、その他にも学ぶことが多く憲法の学習だけにさらに時間を確保することが難しいというのが教育現場を経験した者としての感想です。

私も立場が変わりましたので別のアプローチで、学校といろいろな面で接点を持ち憲法の重要性を伝えていきたいと考えているところです。

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